一緒にお風呂大作戦

〜一緒にお風呂大作戦〜 その3


(まさか、誰か入ってきやがったのかっ!?)
 悟空の自分の肩越しに背後を見る視線に三蔵は直感的にそう思った。
 けれど三蔵がそう思って背後―――この露天風呂の入り口を振り返る間もなく、悟空が飛沫をあげて勢い良く立ち上がる。
「あっ、悟浄、八戒!」
 と今の状況にとって更に一番最悪な名前を叫びながら。
 そして三蔵がそれにハッとなって入り口の方を振り返ってみた時には、何も身に着けていない状態で呑気に二人に向かって手を振っている悟空をこれ以上ないくらい呆けた表情でぽかんと見ている悟浄と八戒の二人の姿がそこにあった。




「いやぁ、さすがの僕も驚きましたね。まさか悟空がここにいるなんて思いませんでしたから。一瞬、女湯と間違えてしまったのかと思ってしまいましたよ」
「ううん、違うよ。俺がこっちに入ってきたの。一人で入るのもつまんないし」
「そうですよね。どうせなら楽しく皆で入った方がいいですものね」
「八戒もそう思う?」
「ええ、思いますよv」
「えへへ、よかったー」
 そう言って悟空は肩までちゃぷんと湯に浸かりながら、本当に嬉しそうな笑顔を見せた。
 会話だけを聞いていれば、実にほのぼのとしているが、ここは男湯。
 そこに堂々と女が一人入っているという異常ともいうべき状態だ。
 今更悔やんだところでどうにもならないが、二人(悟浄と八戒)がこの露天風呂入ってくる前に悟空を女風呂の方へと戻すことができなかったのは三蔵一生の不覚である。
 その時三蔵に唯一出来た行動といえば、二人がぽかんと呆けている間に素っ裸だった悟空の体に素早くタオルを巻いて二人の視線からその体を隠したことだけである。
 だがそれでも二人の目にはしっかりと悟空の裸体が焼き付けられてしまったことだろう。
(ムカつく……)
 いいトコロだったのを邪魔されたこともあり、三蔵の機嫌は急降下していく一方だ。
 しかもそんな三蔵の気持ちなど露知らず、悟空はあっさりと二人が一緒に入ることも許してしまった。それがまた余計に腹が立ち、三蔵の苛々は募るばかりだった。
「三蔵サマ、ご機嫌ナナメねー。何がそんなに面白くないのかしらんv」
 更にその横でニヤケ面全開の悟浄がおちょくるように言うものだから、元よりあまり強くない三蔵の忍耐力もあっさりとその限界を超えてしまう。
「せっかくいい光景が目の前にあるんだから、もっとリラックスしてだな……ぶごべぼっ!!」
「そんなにいい光景が見たいんだったら俺が今すぐ見せてやるよ。テメェにより相応しい地獄の入り口の光景をな」
 そう言いながら三蔵は悟浄の頭を片手で抑えて湯に沈めた。
「ゴボゴボッ、フゴォッ!!」
 その三蔵のいきなりの行為に明確な殺意を感じ取ったのか、悟浄が意味不明な叫びをあげながら必死に暴れて抵抗をみせる。
 その時の水飛沫が八戒と悟空の方にまでいったらしく、八戒がそれを手で顔にかかるのを防ぎながら呆れたように言う。
「もう、二人とも何やってるんですか。こっちにまで飛沫が飛んできてますよ。……悟空、大丈夫ですか?」
「うん。俺は大丈夫だけど……」
 その悟空の声がどこかおかしいことに気付いたのは、一番悟空の近くにいた八戒だけでなかった。
「おいっ、まさかテメェっ……」
「ちょっと……のぼせ、ちゃったかも……」
 三蔵が慌てて駆け寄った時には、もう悟空は顔半分をぶくぶくと湯に沈ませてしまっていた。




「―――ったく、面倒かけやがって」
 そう言いながら三蔵は水で冷やしたタオルを悟空の額に乗せながら呟いた。
 その横では八戒と悟浄の二人がパタパタと団扇で布団の上に横になっている悟空を扇いでいる。
「仕方ありませんよ。僕らが入る前から温泉に入っていたようですし。もっとその辺りのことを気遣うべきでした」
 八戒はそう言って、真っ赤な顔ではふはふと少し荒い呼吸を繰り返してしている悟空にその視線を落とした。
 ―――あれから大変だった。
 湯の中に沈みかけた悟空を慌てて引き上げたものの、既に悟空の意識はなく。
 その後、誰が女の湯の脱衣所にある悟空の着替えを取りにいくのかとか、誰が悟空に服を着せるかで軽く揉めたりもしたが、何とか誰にも見つからずに自分達の部屋にまで運ぶことができたのは本当に幸いだった、と未だ意識を失ったままの悟空を見ながら三蔵はそう思う。
 その時八戒が思い出し笑いをするかのように、小さく笑った。
「ふふっ、でも安心しました」
「ああ?」
 訝しげに三蔵が八戒を見れば、殊更楽しげな翡翠の瞳とぶつかる。
「だって僕、三蔵はもう追い抜けないほど先にいっているのかと思っていましたから」
「……どういう意味だ」
「そのままの意味ですよ。今日の悟空の態度を見て確信しました。悟空の、僕に対する態度と貴方に対する態度。全然変わりませんでしたよね?だったらまだまだ僕にもチャンスはあるかなぁって」
「……何だと?」
 その言葉に三蔵が眉を顰める間もなく、今度は悟浄が二人の間に入り込んでくる。
「おいおい、俺の存在を忘れてないか?あの場には俺もいたんだぜ?だったら俺にも八戒と同じことが言えるってことだろ」
「おや、悟浄も参戦ですか?」
「当たり前だろ。ここで黙って見てるようならオトコじゃねぇって」
「……いい度胸だな、テメェら」
 二人の相次ぐ聞き捨てならない発言に、三蔵の纏う空気が一変して剣呑なものとなる。
 だがこれくらいのことで怯むような二人ではなく、その三蔵のきつい眼差しを堂々と受けて立つ。
「ふふっ。面白いですね。これはお互いへの宣戦布告ってことでいいですか?」
「いいね、嫌いじゃないぜ、こーゆー展開」
 そうやって三人が互いを牽制するようにバチバチと見えない火花を散らしている時悟空はというと、『肉まん……いっぱい』とムニャムニャ呟きながらただひたすら幸せそうに笑っていた。



(とりあえず)END(^^;)



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アナタならどっち?!企画のアンケートの結果、『まさか誰か(八戒&悟浄)入ってきやがったのか!? 』が15票、『誰もいない、気のせいだ』が7票だったので、邪魔する方向で続きを書いてみました。
悟空総受けバンザーイ\(T▽T)/みたいな感じですけれど、少しでも楽しんでもらえたなら嬉しいです。
まだまだお子様な悟空ですが、無意識に無邪気に大人組を振り回してくれるといいなぁ(理想)
お子様ですけど、こちらの悟空は某乙女ゲーの影響により、かなりナイスバデーなごきゅんとなっております(^^;)
でも小さい胸を気にするごきゅんも、なかなかいいんですよねぇ……。女の子悟空にする時はいつもそれで迷います(笑)

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2008/07/19 23:39 | 愛の劇場コメント(0)TRACKBACK(0)  TOP

ありがとうございますv

暑さにすっかりまいってボーっとしている間に、あっという間に週末を迎えてました。
その間、職場でまた派手に転んだり、車のシートベルトをつけて普通に運転してたら、何故か急にそれが外れなくなって車から降りられない!!と軽くパニくったり(その座席の背もたれを後ろに倒し、シートも後ろに引いて脱出。カチッとハマったまま取れなかったベルトも力任せで引っ張ったら外せました)もしましたが、とりあえず元気です(^^;)

そしてこブログにちょこっと書いた温泉ネタ。
同じく暑さにやられて妄想した産物でしたが、意外にもご好評(?)頂けてすごく嬉しかったです。
なので調子に乗って、その続きを書いてみました(^^;)


↓↓↓


〜一緒にお風呂大作戦〜


「さんぞー、ここの温泉、広くてすっごく気持ちいいねっ」
「……」
「これだけ広いとさぁ、つい泳ぎたくなっちゃうよな?」
「…………」
「な、三蔵。俺ちょっと泳いでもいーい?」
「………………」
「……さんぞ、俺の話ちゃんと聞いている?」
 何を話しても全く返事を返そうとしない三蔵をさすがの悟空も不審に思ったのか、三蔵が故意に取っていた距離を一気に縮めるようにして近付き、その顔を覗きこんでくる。
「……っ、」
 突然の悟空の接近に、三蔵は手に持っていた猪口を湯の中に落としそうになる。
 しかし、何とかそれを堪えた三蔵は、
「煩ぇ、今俺は酒を楽しんでいるんだ。その俺の邪魔するんじゃねぇ。遊びたいなら一人で勝手に遊んでろ」
というと、自分を覗き込んでくる金の瞳からその視線を逸らすように、ぷいっと横を向いた。
 その言葉と三蔵の態度が不満だったのか、悟空はぷぅとこれ以上ないくらい頬を膨らませた。
 そしてそれ以上何も言わず、ちゃぷん、と軽い水音を立てながら三蔵に背を向けて、さっさと向こうの端の方に行ってしまう。
 三蔵は悟空が自分から離れていったことに心底ホッとしつつも、それでもその視線は悟空をずっと追っていた。
 当たり前だが、今悟空は素っ裸の状態である。
 ここの温泉のお湯が乳白色でよかったのか悪かったのか、こうして悟空が湯に浸かっている状態なら、その裸身をはっきりと見ることはない。
 だがそれでも今のように必要以上に接近されれば、それなりに見えてしまうというもの。
(アイツ……またデカくなってやがったな……)
 ついついそんなことを思ってしまった三蔵は、その考えを頭から追い出すように首を振って、猪口をぐいっと呷る。
 そうやって三蔵は悟空をその視界の端に捉えがらも、この露天風呂の入り口にも過剰なほどの注意を払っていた。
 いくら今が皆が寝静まっている深夜であっても、いつ誰がこの露天風呂に入ってくるかわからないからである。
 今の状態の悟空を自分以外の他人に見せる気など三蔵には全くなく、もし誰か入ってこようものなら、どんな手段を使ってでも全力で阻止する気でいた。
 そんな三蔵の気持ちなど露知らず、悟空は呑気に一人遊びに夢中だ。
 バシャバシャとお湯を跳ねさせたり、端から端まで泳いでみたりと、忙しなく動き回っている。
 先程の膨れっ面が嘘のような、眩しいほどの笑顔で存分に温泉を楽しんでいる悟空を眺めていると、何だか細かいことを気にしている自分が急にバカらしくなってきた。


 ここは名湯といわれる温泉で、美味い酒もあり、そして目の前にはその肴ともいうべき、悟空がいる。

「―――悟空」
 三蔵が名前を呼ぶと、温泉の隅で遊んでいた悟空がぱっと振り返った。
 その悟空に向かって軽く手招きをすれば、やっと構ってもらえると思ったのか、花咲くような笑顔を見せて悟空が文字通り駆け寄ってくる。
「三蔵、何?」
「つげ」
 その悟空に向かって三蔵は手に持ってた猪口を向けて一言そう言った。
 悟空は一瞬、きょとんとしたような表情をしたものの、盆に載せられて湯の上に浮かんでいる酒の入った徳利に気がつくと、やや危なっかしい手つきながらもそれを取って三蔵が差し向けた猪口に酒を注いだ。
「なー、さんぞー。それ美味いの?」
 そう言いながら物欲しそうな目で猪口を見つめる悟空に、三蔵はつれなく答える。
「この美味さはガキにはわからねぇよ」
「何だよ、それ!!俺だってお酒の味くらいわかるよ!」
「嘘つけ。以前俺に隠れて酒飲んで、ぶっ倒れたのはどこのどいつだ」
「う……。た、確かに前飲んだ時はそうだったかもしれないけど!今俺は18歳なんだよ!もう子供じゃねぇもん!」
「―――確かに、てめぇはもうガキじゃねぇな……」
 子供扱いされてムキになって反論する悟空に、三蔵はそう言いながら手を伸ばし、頬に張り付いていた悟空の髪をかきあげてやる。
 その仕草に驚いたのか、悟空がその金の瞳を大きく見開いて三蔵を見つめた。
「三蔵……?」
「……」
 その悟空の問いかけにも答えず三蔵は、悟空の髪をかき上げたその手を頬へとずらし、頤にまでもってくる。
 女性らしい、すっかり丸みを帯びた体。
 普段は透けるようなその白い肌も今は薄桃色に染まっており、今までの悟空にはなかった色香が漂っている。
 ―――何もかも、眩暈がするほどに悟空は女だった。
 三蔵は悟空の頤を掴んだまま、空いているもう片方の手で悟空の体をぐっと引き寄せた。
 悟空はされるがままで一切抵抗しない。
 その金の瞳もただずっと三蔵を、三蔵だけを映していた。
 三蔵もその瞳を見つめながら、ゆっくりと顔を近づけていく。
 そうして、三蔵の唇と悟空の唇が触れ合おうとしたまさにその時だった。
「あっ!!」
 突然悟空が小さく叫び、それまで三蔵だけを見ていた悟空の瞳が大きく動く。
 何事かと三蔵が悟空を見れば、悟空のその視線は三蔵の肩越しにその背後へと向けられていた―――。



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突然ですが、選択してして下さい。(^^;)

1.まさか誰か(八戒&悟浄)入ってきやがったのか!?

2.誰もいない、気のせいだ。


以上の二つから、貴方のお好みの展開を選んでください。(^^;)
投票してもらい、どちらか多かった方の展開に進みます。
三蔵様をオトコにするか、ヘタレにするかはすべて皆様の手に委ねられております(笑)
では、どうぞ♪

投票しに行く(投票は終了しました。ご協力ありがとうございました



以下ブログ拍手レス↓↓



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2008/07/12 22:50 | 愛の劇場コメント(0)TRACKBACK(0)  TOP

温泉……

アニメペルソナの影響もあって、近日発売予定の『ペルソナ4』のサイトを見てみました。
そしたらですね、その発売に先駆けてアトラスがミニゲームを公開してまして……。

その名もというシロモノ。

内容は露天風呂の間仕切りにある覗き穴(?)をクリック(連打)して、『ペルソナ4』に登場する女の子のちらリズム全開なお色気シーンを堪能するというものです。

ペルソナってこういうゲームだったっけ???

と少し疑問に思いつつも、条件反射のように覗き穴をクリックしてミニゲームを堪能する私がここに(^^;)
ウム、連打するだけの単純なゲームですが、それなりに達成感はありますね。
婦女子が入浴中の温泉を覗くという演出(?)は古来よりたくさんありますが、個人的に最近はなかなか見てなかったので、すごく新鮮に映りましたね〜。

それにしても……・。
もし、もしもですよ。
露天風呂で仕切りの向こうに悟空(♀)がいて、そこに覗き穴を発見してしまったら、三蔵様はクールなフリをしつつも、やっぱり覗いてしまうんでしょうか……。
というよりむしろ、悟空が隣に三蔵がいることを知ったら、仕切りを越えてやってくるに1票を投じたいです。


「なー、三蔵。そっちに今悟浄とか八戒もいるの?」
「ああ?何であいつらと風呂まで一緒に入らなきゃならねぇんだ」
「じゃ、今三蔵一人なんだ……。なー、じゃあ俺、今からそっちに行ってもいーい?」
「ゴボォっ!(←足を滑らせて思わず湯の中に沈み込んでしまったらしい音)」
「あっ!ちょうどこの仕切りの端に少し隙間があるよ!ここを越えればそっちに行けるかも」
 ざぶざぶと水音を立てて悟空が移動する音が三蔵の耳にもはっきりと聞こえる。
「お、おいっ、待てっ!」
 慌ててそう叫びながら三蔵も立ち上がるが、もう遅かった。
 仕切りの端にある植え込みがガサガサと不自然に揺れたと思ったら、そこから素肌にタオルを1枚纏っただけの悟空がそこからひょっこりと顔を出したのである。
 そして、きょろきょろと首を動かして、湯煙の中にいる三蔵を見つけると、
「さんぞー」
 と心底嬉しそうに笑って悟空はそのままざぶんっと湯の中に飛び込んできた。
 そうやってあまりに悟空が嬉しそうに笑うから、三蔵は『今すぐ女風呂に戻れ!』という言葉を呑みこむしかなかった。


なーんてね……ふふっ(遠い目)。
すみません、ごめんなさい、許して下さい。
連日30度を越える猛暑が続いて、頭が溶けまくっているんです。
しばらく、この変な妄想が続くかも(^^;)

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2008/07/08 22:10 | 愛の劇場コメント(0)TRACKBACK(0)  TOP

三空の日

風邪で寝込んでいる母に、「何か食べたいものある?」と聞いたならば、速攻で、

「お寿司」

と返ってきた次第であります。


…………。

母上様……ひょっとしてもうかなり元気になっていらっしゃるのでは?と思いつつも、地元にあるお寿司のチェーン店までお寿司を買いに車を走らせた、そんな三月九日の午後の出来事です、今晩は(^^;)

前置きが長かったですが、三空の日ですね!
他所様のサイト様の三空SSに癒された日でした。
風邪で絶不調の体も元気になるというものです(ノ´∀`*)

……その分、自分のサイトで何も用意できなかったことが申し訳なくもあり、悔しくもあり……。
突発的SSですが、相変わらずな猛獣三蔵とそれに振り回される悟空を書きましたので、よろしければ。(^^;)


↓↓↓



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2008/03/09 23:21 | 愛の劇場コメント(0)TRACKBACK(0)  TOP

嵐の中の妄想

台風4号が通過中、ひたすら妄想してました。

↓↓

「子っづくりしましょ〜♪」

 ガタタタッ

 突然、とんでもない言葉を鼻歌混じりに口ずさみながら執務室の中へと入ってきた悟空に、三蔵は思いっきり前へとつんのめってしまい、強かに額を机に打ち付けてしまった。
「……何だ、その歌は。どこで覚えてきやがった?」
 漸くその最初の衝撃から立ち直ることができた三蔵は、胡乱げな瞳で悟空を見つめ、殊更低い声で尋ねる。
 しかし、悟空はそんな様子の三蔵を気にする風でもなく、にこーと無邪気な笑顔を見せながらあっさりと答えた。
「あんな、八戒ンちのテレビでやってるアニメの歌で、悟浄がよく見せてくれるんだ」
 
 ばきっ

 その瞬間、三蔵が持っていた筆が大きな音を立てて見事真っ二つに折れた。
(あンのクソ河童!ガキになんてもの見せてやがんだ!!)
 ふつふつと今はこの場にいない悟浄に対して怒りを募らせている三蔵とは対照的に、悟空はそれはそれは楽しそうにどう考えてもお子様向けではなさそうなアニメの歌を歌っている。
 最初のフレーズも衝撃的だったが、その後の歌詞もかなりのもので、『お慕い申し上げている』だの『たったひとつの操をささげます』だの悟空は平気で口にして歌っている。
 しかし悟空がその言葉の意味を理解しているとはどうしても思えない。
 三蔵がそう思いながら悟空を呆れた瞳で見つめていると、案の定、一曲全部歌い終えた悟空から質問が三蔵に飛んできた。
「なー、三蔵。ところで『みさお』って何?悟浄にはすっごく大切なもんだとしか教えてくれなかった。後は三蔵に聞けって」

 ベキボキバキ、グシャっ!!

 その悟空の言葉を聞いた瞬間、三蔵の手にあった折れた筆が更に粉々に粉砕された。
 しょうもない歌を頼んでもいないのに丸々1曲聴かされた挙句、この質問である。
 しかもこれがバカッパの仕組んだ本当の目的だとわかれば、尚更三蔵の怒りのボルテージは上がる一方だった。
 何も知らない悟空を使い、人をおちょくって遊ぶとはいい度胸だ。余程死にたいとみえる。
 そんなに死にたいのだったら、今すぐにでも地獄へ送ってやろう。
 そんなことを三蔵が思っている間も、悟空は悟浄にいい様に遊ばれているとも知らず、「なーなー、『みさお』って何なんだよ〜」と相変わらず三蔵に付きまとって離れない。
 既に悟浄を抹殺、もしくはどうやって地獄へ送ってやるのかに気を取られていた三蔵は、悟空を黙らせるために懐から愛用の銃を取り出しながら投げやりにその質問に答えた。
「クソ河童から聞いたんだろうが。俺に聞いても同じ答えしか出ねぇよ」
「それってやっぱりすごく大切なものってこと?」
「ああ、そうだ」
 三蔵がそういうと、悟空は小首をちょっと傾げて何か考えるような仕草を見せたが、次の瞬間には満面の笑みを浮かべてこう言った。
「そうなんだ!やっぱり三蔵にとっても大切なんだね。じゃあさ、じゃあさ。俺の『みさお』は三蔵にあげるね!」
 その瞬間、銃を片手に執務室を出ようとしていた三蔵の動きがぴたりと止まった。
「ああ?今何つった、テメェ」
「だからおれの『みさお』を三蔵にあげるって言ったんだよ」
「……どうしてそうなる」
「正直まだ俺、『みさお』って何なのかよくわかんないけど、でもたった一つしかないすっごく大切なものなんだっていうのはわかったからさ。だったら俺の『みさお』は三蔵にあげたいなって思って。俺にもちゃんと『みさお』はあるって悟浄いってたし。それでさ、ちゃんと俺が『みさお』っていうのがどういうものかわかった時は三蔵にあげるから、その時は三蔵受け取ってくれる?」
「……その時になって後悔しても知らんぞ」
「後悔なんかしないよー。三蔵だからあげたいんだし。な、受け取ってくれるよな?」
 と、悟空はどこまでも無邪気な顔でそう言う。
 悟空は操の意味をまだ殆ど理解していない。
 それはわかっているが、せっかくくれるというのだ。それを断る理由は三蔵にはなかった。
「その言葉忘れるなよ。だが今俺は忙しい。その話は俺が戻ってきた後にするぞ」
「戻ってきた後って……。今から三蔵どっか行くのか?」
「ああ。少し急用ができてな。それにヤツは逃げ足だけは早い。始末するのに結構時間を取られてしまうかもしれん。だから遅くなっても俺を待たなくていい。先に寝てろ」
 そう言い残し、今度こそ執務室を出ようとする三蔵だったが、扉を開けた途端またしても悟空に呼び止められてしまう。
「三蔵、帰りが遅くなるならちょっと待って。最後にもう一個だけ聞きたいことあるんだ」
「何だよ」
 苛々しながら三蔵が振り返ると、悟空はにこーっと先程と全く変わらない笑顔を見せながら言葉を発する。
「な、『子作り』ってどうやるの?」
 その言葉に三蔵はぴきりと凍りついた。
「……それも悟浄が俺に聞け、と言ったのか?」
「ううん、違うよ。こっちは八戒ー」
 その瞬間、三蔵は敵は悟浄だけではなかったことを知る。
「俺どうしても『みさお』と『子作り』の二つが知りたくてさ。三蔵出掛ける前にちょこっとでいいから教えてよ」
 きらきらと期待に満ちた目で三蔵を見上げながら悟空はそう言った。
 三蔵なら何でも知っているし、何でも答えてくれると信じて疑っていない瞳である。

 三蔵の本当に試練は今まさに、始まったばかりであった……。




END(^^;)



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色々スランプ気味なので、ちょっとここでリハビリです。
TVアニメ『すもももももも〜地上最強のヨメ〜』のOP曲を聴いて浮かんだネタ。
外は台風4号の通過でビュービュー、ゴォゴォ言ってたのに、私はこんな妄想ばかりしてました。

テーマ : 最遊記
ジャンル: アニメ・コミック

2007/07/15 11:59 | 愛の劇場コメント(0)TRACKBACK(0)  TOP